納豆を作ったらまちの見え方が変わった。愛してやまない納豆を手作りするBe Wild先輩に聞く、納豆の魅力
Be Wildな生き方・暮らし方・考え方を教えてもらう、『Be Wild先輩に聞いてみた!』の連載がスタート!第一回目のBe Wild先輩は、野草を使って納豆をつくる久保 陽香(くぼ はるか)さん。実は、『道の駅 四季の郷公園FOOD HUNTER PARK』(以下、FOOD HUNTER PARK)がある和歌山県は、納豆消費量が日本でワースト一位なんだとか(参考1)。そんな和歌山の人たちに、納豆の魅力を伝えるべく!久保さんに納豆の魅力をお聞きしてみると、自然との関わり方まで見えてきました
久保 陽香(くぼ はるか)
神戸大学を休学し、シェアハウスでの自給自足生活や屋久島への移住を経験。その後、効率性や利便性の追求を第一にしない、人間らしい幸せな生き方の提案を目指す『非電化工房』に弟子入りし、建築や農業など暮らしにかかわる技術を学ぶ。現在は、神戸市内の農水産物を取り扱う『FARMSTAND』(ファームスタンド)に勤務。
納豆こそ理想の生き方
-手作りするほどの納豆好きということですが、どんなところに納豆の魅力を感じていますか?
美味しさはもちろんですが、納豆は私の理想の生き方を体現しているんです。
-納豆こそ理想の生き方・・・!ぜひ詳しくお聞きしたいです。
納豆を作るのに欠かせない納豆菌は「誰かの役にたとう!」とは多分思っていないですよね。納豆菌は生物本来の営みをしているだけなのに、私たちのおいしさにつながっています。ありのまま生きているだけで誰かの役に立っている、という生き方が私の理想なんです。納豆菌、さすがだなぁといつも思っています。
-スーパーで買える納豆をなぜ手作りしはじめたのですか?
納豆を食べたときに出るパックのゴミが気になっていたんです。納豆は大好きなのに、毎回ゴミが出てしまう罪悪感がずっとあって。そんなモヤモヤした気持ちを抱えていた時に、いとしまシェアハウス(※)という場所で藁納豆を作る機会があったんです。蒸した大豆を藁でくるみ、体温より少し高い温度に保って一日~二日間置くだけ。簡単なのにすごく美味しくて感動しました。
※いとしまシェアハウス:福岡県糸島市にある、「食べ物・お金・エネルギーを自分たちでつくる」をコンセプトにしたシェアハウス。
写真:久保さんがいとしまシェアハウスで作った藁納豆。
その後自給自足の生活を目指して屋久島に移住したのですが、せっかくならスーパーで納豆を買うのではなく、また自分で作ろうと思って。しかし、屋久島は田んぼの数も少なく、藁が手に入らなかったんです。知り合いに相談したら、「びわの葉で納豆を作れるらしいから、他の野草でも作れるんじゃない?」と言われて試しに作ったら、野草納豆が簡単にできちゃいました。
写真:久保さんが作った野草納豆。使用する野草が変わると香りが全然違うのだとか。
野草納豆は、藁納豆に使用する藁を野草に変えて作ったものです。蒸した大豆を野草でくるんで発酵させると出来ます。はじめは『アシタバ』や『ツワブキ』の葉で試したところ、市販の納豆と比べて香りが高く、あっという間に野草納豆にはまってしまいました。
野草納豆を作ったらまちの見え方が変わった
―納豆を買わずに作る選択肢があったとは。手間暇かけてでも野草納豆をつくる理由はなんですか?
野草納豆を作り始めたことで、まちの見え方が変わったんです。ここで言う“まち”は、自分が住むいわゆる“町”という意味合いだけでなく、“身の回りのものすべて”という意味合いも含んでいます。今まで景観としてしか捉えていなかったまちの中の木や土、花などが、ひとつひとつ異なる生き物に見えてきて。自分の体に入る納豆に土や植物が直結するので、自然をより身近に感じるようになりました。
写真:こちらも久保さん手作りの野草納豆。自然が私達の食に直結することがよくわかります。
野草納豆を作り始めてからは、まちが野草の宝庫に見えるようになって嬉しかったです。「納豆作れそう!」と思う葉を見つけると、いつもわくわくします。一方で、まちの植物に元気が無いことに気付く時もあって。今までは、まちに植物があるだけで「良いじゃん!」と思っていましたが、よく見ると立つだけで必死な木もあるんです。そうした植物を見つけて、ちょっと心が痛むようにもなりました。
写真:久保さんが移住した屋久島。豊かな自然に圧倒されます。
写真:屋久島で海を見つめる久保さん(右)と、久保さんの友人(左)
私は「自然に帰りたい!」と思って、『いとしまシェアハウス』や屋久島といった自然豊かな場所に移住したのですが、自分の感覚次第では都市部でも自然を感じられると思うんです。都市部は自然が少ない上に生活音も多いけれど、だからこそ感覚を磨くには良い訓練になる一面もある気がします。思っていたよりも自然は近くにあったんです。
その地域だから作れる『ローカル納豆』を作りたい
―久保さんは色んな場所で野草納豆を作ってきたと思いますが、今後やってみたいことはありますか?
これからは野草に限らず、地域の素材を使った『ローカル納豆』に挑戦したいです。以前自分で大豆を作ってみたのですが、あまり美味しくできなくて、農家さんの偉大さを感じました。今は神戸に住んでいるので、神戸で顔の見える農家さんの大豆にこだわって納豆を作りたいです。
写真:久保さんは屋久島でも納豆ワークショップを行っていました。「私にとって納豆とは?」という話題について話すなど、久保さんならではのテーマも。
―違う土地で作ると、風味や味が異なる納豆が作れそうですね。
他にも「納豆ワークショップをやってほしい」という声をたくさん頂いているので、暮らしにフォーカスした手作り納豆の作り方や食べ方の提案もしたいです。フレーバーティーとの食べ合わせのような、野草納豆だからこそできる食べ方を考案したいですね。まだまだ妄想段階です。
FOOD HUNTER PARKで遊ぶとまちの見え方が変わるかも?
久保さんが身の回りの自然を景観としてではなく、ひとつひとつ異なる生き物として捉えていることが印象深かったです。それは、久保さんが自然に近い距離で生活していた経験あってのことだと思います。FOOD HUNTER PARKには土や木、水などの自然があふれています。FOOD HUNTER PARKで遊んだ後にいつものまちに帰ってみると、久保さんのようにまちの見え方が変わるかもしれません。
おまけコーナー:BE WILD先輩、久保陽香さんに聞く、野草納豆の作り方!
① 野草を摘んでくる
POINT:葉の裏がフサフサしているもの、地面の近くに生えているものがおすすめ!(例:ビワの葉、アシタバなど)
② 大豆を水に浸水させ、7時間ほど置く。(水は大豆の量の約3倍)
③大豆を蒸す(蒸し器や炊飯器を使っても◎)
POINT:指で押してつぶれるくらいの固さになればOK!
④ 野草を沸騰したお湯で消毒する
POINT:100度以上で消毒することで納豆菌以外の菌を死滅させます。
⑤ 熱湯消毒した容器に野草を敷き、その上に大豆をのせ、大豆の上にさらに野草をかぶせる。
POINT:葉のフサフサしている面を大豆に触れるように!
⑥ ふたを少しあけた状態で、新聞紙でタッパーをふわっと包み、40度くらいの温度で保ちながら1~2日間置いて発酵したら完成!
POINT:季節によって保温方法を変える必要があります。(夏は常温で置いておくだけでOK。冬は電気ポットの上においたり発泡スチロールの中に入れたりと、工夫が必要。)
【参考文献】
・1:https://www.sankei.com/west/news/180110/wst1801100004-n1.html